Monoxer Advent Calendar 2023 11日目の記事です。
モノグサ株式会社でCustomer Reliability Engineerとして働いている大野敦です。現在Customer Success and Customer Reliability (CSCR)という領域のTech Lead Manager (TLM)として働いております。
CSCR領域では「Monoxerの利用における”不安の最小化”(Reliability観点)と、”成果の最大化”(Success観点)の両面から顧客を支援すること」をミッションとし、日々プロダクトの開発からプロダクト外の社内ツールの整備などを行っております。直近の開発では顧客向けCSVデータ出力機能や契約請求関連の社内向けサービスの整備などに取り組み中です。
この1年の振り返り
2023年の中で一番の環境の変化といえばCSCR領域のTLMとして一定の開発領域に対して責任を持つ立場になったことです。23年の1月時点ではそもそもCSCRという領域が何をMissionに活動するのかさえ不明確であったのが、PdMの助けもあり3月末にはCSCRのMissionが明文化され、そして4月よりCSCR領域のTLMとなりました。
自分が関わった個別の開発のことも書きたいという気持ちもありつつ、今回はTech Lead Manager 1年目としての振り返りをしたいと思います。
ソルジャーとコマンダー
TLMとして日々業務に当たるなかでたびたび思い出す昔の出来事を書きたいと思います。私が大学に在籍していたときにお世話になったポスドクの方との雑談の中であった話です。当時のことはあまり鮮明には憶えていない(記憶の会社にいるのですが記憶力は高くない)のですが、一つ鮮明に今でも憶えている出来事です。
お世話になったポスドクの方が、研究者というのは個人の学問に対する洞察の深さとそれを適切に研究者にわかるように説明できる形で仮説を立て検証する能力が求められる、という話をしてくれました。研究活動の中で自走して研究を続け成果を出し続けられる研究者が限られたアカデミックのポジションを獲得し、また次の新たな研究をしていくのだということで、常に競争にさらされる非常に厳しい世界であるということを話してくれました。一方そのような競争にさらされることは大変ではありつつ、他の環境では出来ないような最先端を見れるからこそ面白いという話であり、おそらくそのポスドクの方は純粋に研究の面白さを話してくれたのだと思います。そしてその分野で実績を残し生き抜いてきた人のことをソルジャーという言い方をしていました。
一方で、ソルジャーとして大きな成果を出し、その分野におけるポジションを上げていくと研究室のトップとして(わかりやすくは教授として)自分の研究を主導しつつ、組織の運営をしていかなくてはならないという話をしていました。そうなるとソルジャーとしての強さだけではうまく組織を回していけず、組織や人のマネージメントが必要となります。組織や人のマネージメントをしつつ研究を主導していく人のことをソルジャーの対となる表現としてコマンダーという言葉でそのポスドクの方は説明していました。
そしてソルジャーである人が必ずしもコマンダーとして優れた人であるかというとそういうわけではなく、逆にソルジャーが自分自身のものさしでメンバーを指導してしまい組織としてのパフォーマンスを最大化出来ないということがあるという話をしていました。当時私はソルジャーとしての能力を高めるだけではコマンダーにはなれないのだということを漠然と感じていましたが、この話を聞いたときにやはりどの分野であってもソルジャーの能力とコマンダーの能力には根本的にことなるベクトルのスキルが存在するのだと納得しました。
私がTLMとしてCSCR領域を担当することになった4月に社内のマネージャー研修がありました。そのモノグサのマネージャー研修ではマネージメントには3つの種類があるという話があり、それは「仕事のマネージメント」「人のマネージメント」「チームのマネージメント」であります。人やチームのマネージメントはおそらくわかりやすいコマンダーの責務だと思います。また仕事のマネージメントと聞くとマネージャー自身が様々な仕事にたいして主導権を握り円滑に進めるというのを想像するかもしれませんが、どちらかといえば仕事を始める前の目標設定やメンバーの業務支援という意味でのマネージメントが詳細の取り組むこととして書かれており、先のソルジャーとコマンダーという話で言えばコマンダー的な責務であります。これまではソルジャーとしていかに新たなことに挑戦し成長していくかという意識がほぼ全てであったのが、このマネージャー研修のタイミングでコマンダーとしての意識を強く持ち合わせなくてはならないと感じたのを憶えています。
モノグサのエンジニアキャリアパス
モノグサではマネジャーというのは単純なバッジのようなものであるとマネージャー研修で説明されています。すなわち本人がやりたいという意志があり社内における合意が取れればマネージャーになれますし、逆にマネージャーになったけれどもやはりマネージメント以外の業務をより集中して取り組みたいという気持ちになればマネージャーをやめることも可能とされています。
Product Developmentグループに限定して話をすれば、開発領域ごとにEngineering Manager(EM)、Tech Lead(TL)、Product Manager(PdM)が割り当てられており、TLとして活躍をしていくというエンジニアキャリアパスもあります(他社ではTLとは別にIndividual Contributor(IC)と呼ばれる個人の技術力を高めることで貢献するロールも存在するようです)。モノグサにおいてTLは担当領域の開発を技術的にリードし、Design Docのレビューやコードレビューなどを行い担当領域内のプロダクトやプロジェクトのマネージメントは行いますが、人のマネージメントは行いません。
私自身は一人のエンジニアとして能力を高めていきたいというのはもちろんですが、組織や人をマネージメントすることで成果を最大化するということについても興味があったため2023年の4月からCSCR領域のTLMとなりましたが、モノグサではTL(や他社でいうIC)として活躍するキャリアパスも存在しますし、実際にTLの方で非常に社内の多くの人からも信頼されているエンジニアも在籍しています。
挑戦できる環境である
この1年の最大の環境の変化はCSCR領域のTLMになったことであるというのを冒頭に書きましたが、もともとモノグサに入社してすぐのとき(約2年前)にCTOの畔柳さんとの1on1の場で「まずは一人のエンジニアとしてプロダクトを開発する能力を身に着けたい。そのうえでどこかのタイミングでマネージメントも経験したい」と希望を伝えていました。当時考えていたこととしては一人のエンジニアとしてある程度の開発を自走できるようになるには、よく言われる1万時間の法則をふまえると5年くらいかかるのではとおもっており、そのくらいのタイミングでマネージメントにも挑戦することになれば良いと考えていました。
そしてCSCRのTLMにならないかと声をかけてもらったのが2023年の1月か2月のタイミングでした。最初は自分自身がまだまだエンジニアとしての能力が不足しているのではないかということを感じており、もう少し自分自身の能力を高めて一人のソフトウェアエンジニアとして活躍したいという話をしてマネージメントは時期尚早なのではと思っていました。しかし、CSCR領域のPdMとも話をする中で自分がTLMとなることが自分自身だけでなく周囲にも良い影響を与えることができると思い始め、3月にTLMとしての挑戦をすることを決意しました。
いま振り返ると挑戦できる環境が整備され挑戦を後押ししてもらえたことは幸運であったと思うと同時に、挑戦するという判断をしてよかったと感じています。
Tech Lead Manager 1年目としての振り返り
4月から約8ヶ月経過し振り返ってみると様々失敗したことや反省すべきだったことはあります。今回は判断と余裕というキーワードで振り返っていきたいと思います。
TLMになる前となった後を比べると、プロダクトの開発における技術的リードからチーム・人のマネージメントまで様々な場面で判断することが増えたと感じています。その中で自分自身に余裕があるときには必要な情報を整理し、分からない点や曖昧な点を明確にして判断することが出来たと思います。一方で自分自身に余裕がないときに、それまで必要な情報を整理しその領域について深く把握している状態であっても、瞬発的に視野が狭まりあまり深く思考せずに表面的な情報で判断してしまうこともありました。そして振り返ってみると余裕がない場面での判断は結果的に良くない選択をしていることが多かったと感じています。
どのようにして余裕を持てばよいのかは、人それぞれやり方があると思いますが、私自身は一つの方法として計画を立てるというのを意識しています。計画を立てることで自分自身が取り組むべきことを明確にすれば、いつ自分が余裕を持てなくなりそうなのかを予測することができると思います。そうなれば事前に関係者に連絡を取っておくなど立ち回ることができますし、自分の状況を正しく周囲に伝えること自体が最終的には自分を助けることにもつながるのではないでしょうか。
また、この計画を立てるというのは表面的にはいつまでに何をするかを決めること(極端な表現をすると四半期ごとのOKRやKPIを決めるだけ)のように思えますが、重要なのはその計画を完遂するために必要な項目を洗い出し自分に不足していることや事前にやるべきことを明確にし、計画を自分が取り組むべき課題を細分化していくことだと考えています。計画を細分化する作業を進める中では課題の構造的理解が必要となり、単純な一本道での計画の完了とはならない中で関連しあう課題をどのように組み合わせ効率よく進むことができるのかを検討する。その思考を細部にわたって巡らせて自分の取り組むべきことを明確にしておくことで自分の取り組む課題の進捗を管理することができ、素早い判断をする余裕を生み出すことができるのだと思います。
さいごに
Tech Lead Manager 1年目としての振り返りを行ってきましたが、しばらくは継続してCSCR領域のTLMとして開発を推し進めていくことになります。まだまだ自分自身が一人のエンジニアとして知識・経験が不足していると感じているのでそれらを深めていきたいですし、またマネージメントについても継続してよりよいやり方を模索していきたいです。1年後もTLMのままでいればですが、2年目の振り返りを書きたいとおもいます。
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